『玉の輿ご用意しました』 感想
『玉の輿ご用意しました』
著:栗城 偲 イラスト:高緒 拾
≪あらすじ≫
高級車に狙いをつけ、当たり屋を決行!! ところが、それを見破られてしまった!? 初めての大失態に、内心焦る青依(あおい)。けれど車から降りてきた男・印南(いなみ)は、青依の痛がるそぶりに顔色一つ変えない。それどころか、平然と「通報されたくなけれ ば言うことを聞け」と命令してきた!! 厄介なことになった、と思いつつ拒否権のない青依に、印南はなぜか「9ヶ月間、俺の恋人のフリをしろ」と言い出して!?
『玉の輿ご用意しました』シリーズの1冊目です。
3冊目まで出ていますが、そちらはまた後日にでも。
なお、小説の1冊目はコミック版でも発売されていますが、そちらも読破済です。
コミック版も面白いですし、作画は原作のイラストを担当されている高緒先生なので、違和感もないですしそちらもおすすめです。
★ここからネタバレ注意です。
1冊目では、中学卒業とともに一家離散という辛い家庭環境で育ち、車の当たり屋をしていた青依くんと、エリート一家に育ちながらもゲイばれして倒産寸前の関連企業を立て直したスパダリ印南社長の出会いとお付き合いまでのお話です。
簡単に言えば、マイ・フェア・レディのBL版ですね。
最初は印南も高慢で偏屈なキャラですが、言葉にするのが下手だったのが努力をしたり、青依くんの涙で気持ちを入れ替えたり、と攻めの方も最初から完璧ではなく、成長してスパダリになった感じです。食べたことのないお子様ランチを青依くんが大人様ランチと称して作ってくれたり、と二人の心が近づく過程が楽しいです。
そして、受けの青依くんのキャラが、読んでいるこちらも応援したくなるとってもいい子です。
育ちのせいもあり中卒で教養もなく、就職した先では仕事中の事故でけがをして、あげくに辞めさせられるという、非常にかわいそうな境遇です。
コンプレックスのかたまりでしたが、印南の恋人役を全うするために、英会話やマナー教室など、最初は嫌々ながらも一生懸命にこなしていきます。
勉強が嫌いといっても、そもそも勉強する機会が与えられていなかっただけで、だんだんと本人も知識が増えていくことが楽しくなっていきます。
さらに、カメラアイという特殊能力があることもわかりますが、それをどんなことで生かせるかもわからず、このままではいけないと思いながら葛藤しています。
ただ、トラブルもあり、自分の教養のなさが印南に迷惑をかけるのでは、と思い一度は身を引きますが、結局印南が迎えにきてハッピーエンドで戻ります。
青依くんは、確かに粗野な部分はありますが、とても素直でポジティブに頑張れる本当に良い子で、ちゃんとチャンスや機会さえあれば、きちんと努力をして成長できるというのを感じさせてくれる子です。
あたり屋だった彼が、印南と出会い、社会人として成長していくのが、素直に好感がもてる作品です。
もはやメインキャラともいえる、印南の親友兼秘書の酒匂さんが、これまたいいお兄ちゃんとして、フォローしてくれます。
この三人の掛け合いもこの作品の面白い点だと思います。
2冊目、3冊目と一気にではなく、少しずつ成長していく姿が見守れるシリーズです!