感想つぶやきdiary

漫画、アニメ、ラノベ小説などの感想的なものをつぶやきます。漫画や小説はBLものが多めになるかと。

『緑土なす』 感想

『緑土なす』 みやしろちうこ 著/user イラスト

 

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緑土なす



≪あらすじ≫
国土に緑をもたらす最後の王と、山奥で野人のように暮らしていた男の恋
そして、ふたりを護る王族命の家臣一族「灰色狼」の物語

山奥で野人のように暮らしていた"足弱"は、生まれて初めて上京した都で、千年続く王朝の最後の王である今世王レシェイヌの庶子の"兄上さま"だと発見され、宮殿に保護される。
国土に緑をもたらす奇跡の力を持つ王族は、血族しか愛せない宿命。
しかし、十数年前の流行病により、今や生き残っているのは今世王レシェイヌただひとりだった。
孤独のために死にかけていた今世王は、ようやく発見した最後の血族である足弱に夢中ですがりつき、ひたすら愛を捧げる。
そして、王族命の家臣一族「灰色狼」もまた、真綿に包むように足弱の世話をし、尽くそうとする。
自分が王族だとは思えない足弱にはそのすべてが困惑のもとで、耐えられず、ついに宮殿をあとにしようとするが……。

この作品は、私的には文学作品だと思っています。
たくさん他にも好きなBL小説はありますが、これはちょっと違う域の作品だと思います。
世界観、キャラクター設定、文体等、諸々が素晴らしく、衝撃を受けた作品です。

★ここからネタバレも含みますので、お気をつけください。

血族しか愛せないという王族の設定や、その王族につかえる「灰色狼」とよばれる一族など、オリジナリティにあふれた設定と世界観に、引き込まれます。
それぞれのキャラクターの繊細な心の機微の描写も秀逸で、警戒心マックスだった足弱が、少しずつレシェイヌ(今世王)に寄り添っていくのがとても丁寧に描かれています。
足弱は、小さいころに前の今世王(レシェイヌの父)が魔が差して侍女に手を付けたことで生まれた庶子でした。
レシェイヌが愛したことで、王族であると確信する今世王自身や灰色狼たちと違い、まさか自分が王族とは信じがたい足弱。
しかも、彼を拾い山奥で育てた老人は、王族に恨みをもつ人物で、王族の血族同士で愛し合う性を倫理に反する行為だと足弱に教え込みました。
そんな山奥で育った山人の足弱が、急に王族です、と言われて、しかも弟に愛を迫られても、とまどうばかりでした。
ただただ怯えて帰りたいと言い続けても帰らせてもらえず、ついにはレシェイヌに襲われてしまう始末で・・・。
そんな最悪のスタートでしたが、レシェイヌの忍耐を伴う足弱への誠実な愛と、14歳で自分以外の血族に死なれ、一人孤独に苛まれながらも最後の王族としての勤めを果たそうとしてきたレシェイヌのひたむきさに、だんだんと足弱も弟の愛を受け止め、王室に残ってもいいと思うようになります。
そんなレシェイヌの粘り勝ちの執着愛と、灰色狼たちの献身が、せつせつと綴られています。

兄上様(足弱)付き侍従長の「命」さんとか、たくさんの灰色狼たちが、いまや二人になってしまった王族に仕えるべく尽くす様は、灰色狼という特殊な一族ならではの面白味だなあと思います。
上巻にあたる本作では、せっかくレシェイヌと心を通わせて、少しずつ足弱も王族としての生活に慣れてきたのに、過去にレシェイヌ以外の王族を死滅させた脅威である「王室病」にレシェイヌがかかってしまい、ラフォスエヌ(足弱)を感染させないため二人は離ればれになるところで終わります。
かなりの長編作品ですが、一気に読んでしまい、さらに続編も即買いしました。